TOP > 世界旅行記目次 > 旅行記23 ダッカ
   
  in  バングラデシュ
     
        スター気分でクルージング  
          
 
 
 
 
バングラデシュの首都ダッカに着いた。が、実はこれと言って観光するところが無い。
ぶっちゃけコルカタに近いから寄ってみただけ。

そう、この国は自他共に認める
「観光産業不毛の地」なのだ。

なんせ、街に外人が居ない(インド人以外)!首都を丸2日間歩き回って見た外人は4人だけ。
人々があまり外国人慣れしていないので、ちょっと日本人が街を歩くとどうなるかというと、
ちょっと小物を見ようと3分立ち止まった結果・・・
↑こんな状態になり、町でちょっと電話をしようものなら
電話屋で電話をしようと1分くらい腰掛けた結果・・・
↑こんな感じになってしまう。
※写真に写っている人はすべて外人を見るために立ち止まった人。エキストラは無し。

初めは私もニコニコ対処するのだが、3分に1回くらい国籍を聞かれ、10分に1回名前を聞かれ、1時間に1回明日の予定を聞かれる。
普通の旅行者なら半日でかなりの疲労がたまるだろう。

ただ、慣れればちょっとしたスター気分。道路を横断していると、対向車線から来た車が急ブレーキで停まって、
「ハロー!ジャパニー!」
と手を振ってまた何事も無かったかのように急発進していった人も居た。勿論後ろを走っていたリキシャ(自転車タクシー)は急ブレーキを余儀なくされ怒っていたが・・・


こんな素朴な国で一番の見所と言えば、ダッカ〜クルナという町を結ぶ船「ロケットスティーマー」だろう。
約250kmの区間を27時間で結ぶ超鈍足船で、未だに琵琶湖で観光用に走っているような外輪船が実用的に庶民の足として使われている。
途中何箇所も停まりながら運行する。ホントに川が多い国だ。
私が乗った船は1929年製で今年76歳。1996年にコルカタでディーゼルに改造されるまではなんと蒸気機関で動いていた代物だ。
こんなレトロな(危なっかしい)船が現役で毎日数百人を乗せがんばっている所は他にあるのだろうか?

「ロケット」というのは名前だけで、外から見ると単なる古い船である。
運行は週6便(金曜以外)あるが機材故障が多く、実際に私が翌日の予約をしようとすると「明日の便はエンジン故障で3日後まで動かないから今日乗ったほうがいいよ」と言われ、ダッカ滞在が一日減ることになってしまった。

1等から3等まであるが、私は個室&エアコン完備の1等をチョイス。1,010タカ(1,740円)掛かるがコレを取れば暑ければ個室で休めるし、2等・3等に遊びに行って交流も楽しむ事ができる。また、3等だと窓が無いためへなちょこ日本人はマラリヤ等の可能性も高くなる。

チケット購入当日の出発となり市内を慌しく見学し17:15停泊するショドルガットに到着。出港時間の18:00までまだ余裕がある。
リキシャから降りた途端、緑色の制服らしきモノを着た男が私の荷物を担ぎだした。
←この緑色野郎に注意!
ちょっと怪しく思うが、インド辺りのポーター緑じゃなくは赤い服だし、もしかしたらロケットスティーマー専用のポーターかも。私は1等利用なのでポーターが付いて当然か・・・まぁ10タカくらいのチップをやればいいか。と殿様旅行気分で付いていく。
乗船豪華なダイニング。両脇が個室。風景
船着場の一番隅が私の船だった。2階に登り、思ったより豪華な1等客室に入る。
荷物を置いたポーターは何やらモゾモゾしている。

そうか、チップが欲しいのか?「はいっ、10タカ!」と渡そうとするが、何故か彼は首を横に振る。

「ミスター、50ドル!」

出た!バングラにもそういう奴はいるんだなー、と少し嬉しく思ったりする。
でも、この男50ドルの価値分かってるのだろうか?
「どこの国で300m荷物運んだポーターが50ドル貰えるんだ!!!お前のひと月分の給料だろうが〜!」と日本語で言い聞かせ、10タカか0タカか好きな方を選べ!と言い10タカを渡す。暫く放置すると渋々帰っていった。
夕日の眺め。  見晴らしの良いデッキ 
18:00丁度に出港。後ろに輝く夕日と船の陰影が美しい。
1等には船頭に専用のデッキがあり、優雅なクルーズが始まった。
思ったよりも内装はきれいで、個室のベッドもフカフカ。集中型エアコンと各自に扇風機、さらに部屋にはコンセントがあったので、モバイラーの私にはこれ以上無い環境だ。夕日が沈むと早速溜まったHP作りに励む。

20:30夕食の時間になった。船内にはカレーのご飯しか無いと聞いていたが、聞くと洋風メニューもあるという。ただ、洋食は250ルピー(430円)とこの国でいえば異常に高い。たかがハンバーグ定食が多分日本で言う5,000円位の価値なのだろう。カレーは150ルピー。これも仕入れていた情報より高かったが、他に食べるものが無いので仕方なし。
内容はエッグ&チキンカレー&フライドライスだった、味は無難。
味はまあまあ
食事を終わるとウェイターが代金を請求してきた。普通は旅程の最後に清算のハズだが、何か怪しい。150ルピーを払い、「領収証をくれ。名前と日付と貴方のサインが書かれた奴。あっ、僕日本で旅行会社やってるから後で料金調べるよ。違ってたらあなたの名前を会社に報告します。」
と言い放つ。

15分後、私の手には食事メニューと代金が書かれたメモ書き程度の紙と、なぜか50ルピーが返金された。どうやらカレーの正規料金は100ルピーだったらしい。

「勝った・・・」

私はひそかにガッツポーズ。

シャワー設備は一応あるが、多分川の水なのでパスして夜をゆっくり過ごす。夜は船の微妙な揺れも手伝って普段よりぐっすり眠る。お陰で翌日楽しみにしていた日の出を見逃した。

船は何度か小さな港に寄りながら進む。人の出入りが激しい。朝方ボリシャルという町で1等の人々はほとんど降りてしまい、1等デッキはガラガラで貸切状態になった。前から来る風も気持ちよく、さらにノンビリ過ごす。

下の階に行くと、エンジンが剥き出しになっており細部にわたって構造が見える。横の外輪部分も中から見ることができ、その迫力に圧倒される。
迫力の外輪。水しぶきが飛ぶ。 剥き出しエンジンルーム
3階は操縦室になっており、屋根の上をつたって気持ちの良い見晴台になっていた。船頭までいけるので、カップルで行けば「タイタニックごっこが」出来るスペースも完備されている。
古いネタだけどバングラでは只今絶賛上映中なので旬です。誰かタイタニックやってきて〜。
3等に入ると、私は芸能人に早変わり。途端に数十人の視線を浴び、例のごとく国籍・名前・今後の予定を聞かれ、英語が喋れる人がみんなに通訳をすると「フムフム」と遅れてみんなが頷く。
慣れてきたのでちょっと視線が快感になってきた。だが日が昇り暑くなってきたので話もそこそこに部屋に退散。
ザコ寝の3等。写真はクルナに近いのでガラガラ。

昼食を摂る事にするが、またしてもカレーだった。しかも同じメニュー。もちろん同じ味。

食べ終り、恐る恐る次の夕食メニューを聞くと、
「セイムカレー!」

「・・・・・ノーサンキュー」さすがに3回目はキツイ。

もしや昨日の復讐かと思ったが、面倒臭いのでやめる。
外は相変わらずのどかな風景が見える。森の奥からベンガルタイガーでも出てこないかな〜と期待するが人と牛しか見えなかった。

部屋に帰るとエアコンが消されていた。アイツもナカナカやるなと思いつつ文句を言いに行く。10分後にエアコン復活。
午後は涼しい部屋で至福の昼寝をする。


バナナで空腹をつなぎ、21:00何と時間通りにクルナ到着。
帰り際、ウェイターにバクシーシ(チップ)を要求されるが勿論払わず。エアコンの恨みは怖いのだ。


27時間の船旅を終えたが、疲れは全くと言っていいほど感じず、逆に最近移動&観光でセカセカしていた気分がほぐされた気がする。
この内容で1010タカは安いと思う。現地人価格は200タカらしいけど・・・

ともあれ、バングラデシュは水と緑には事欠かない国で船上から少しずつ変わっていくその素朴な風景は一見の価値有りだろう。



結論、バングラに行ったら必須です。廃船になる前に乗りましょう!


 
2005年8月17日