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  in  ベトナム
     
         ホーチミン飛び込みセールス  
          
 
 
 
 
ベトナムでは安宿街にカフェと併設された旅行会社が多く存在し、有名な「シンカフェ」・「キムカフェ」をはじめ何十もの旅行社が店を構えており、現地のオプショナルツアーや航空券手配、ハノイまでのバスチケットなどを格安で扱っている。特にベトナムでは各都市への移動手段として鉄道よりも各旅行社の運営する「オープンバス」を利用する人が多く、途中の観光地で自由に乗り降りすることが出来る「オープンチケット」を販売している。

旅を始めて1ヶ月が過ぎ日本での多忙な生活リズムもしばらく休暇気分で抜けていたが、どちらかというと仕事好きだった私は最近「無性に仕事がしたい症候群」が度々発病し、無性に働きたくなる時がある事を感じていた。

そんなある日のこと・・・

事の始まりはカンボジア・シェムリアップの遺跡ツアーで一緒だった日本人の学生さんからの情報で、「ホーチミンでのオプショナルツアーは●●がおススメですよ」と言われた事だった。

ホーチミンでシンカフェ受付の傲慢な態度にちょっと立腹していた私はふとその旅行社ことを思い出し、『ハッピーツアー』という旅行会社を訪ねることにした。そこは中心街のデタム通りから5分くらい離れた場所にある小さな旅行会社だった。

噂どおり受付の雰囲気も良くニコニコと対応するベトナムらしからぬ好印象な旅行会社だったので即ツアーを申し込むことにした。私の対応をしたカウンターのアンちゃん(年齢不詳・ちょっとロリ顔)は日本語を勉強中らしく、ツアーを申し込んだ後も半ば強制的に日本語教室を2時間開く事になった。暇そうな日本人が来ると毎回勉強しているらしくかなりの勉強家だ。

翌日申し込んだ1日メコンデルタツアーは天気もよく途中で立ち寄るお土産屋数件はご愛嬌だが、何といっても昼食付きで1日$6は魅力的でメコン川へ行くまでのバス代と考えてもお得な内容だ。白人パッカーとも楽しく会話が出来て無事ツアーが終了した。

夜になりホテルへ戻りベッドの上に寝転がりながら情報収集用に集めた多数の旅行社パンフレットを整理していると、ふと感じる事があった。

日本語版パンフレットがウサン臭い・・・

有名なシンカフェは日本人スタッフ(たまに傲慢)がいるのでましな日本語版パンフレットを作っているのだが、その他の旅行社は英語版しかなかったり日本語版があっても間違いだらけのパンフレットばかりで、ちょっと怪しささえ感じる物もあった。
ハッピーツアーも日本語パンフは持っておらず、英語版パンフに数年前参加した日本人が書き込んだ感想をコピーしたものがあるだけだった。

日本で毎日のように旅行日程表やオプショナルツアー案内を作っていた事もあり、中途半端な日本語版パンフを見てイライラしていた私は、気付くとパソコンの電源を入れハッピーツアーの日本語版パンフレットを作り始めていた。

カタカタカタカタ・・・・・・・・・・・・・・・

久しぶりの作業に集中してしまい翌日の昼前、十五時間の作業を経て無事日本語版パンフレット完成!(無許可)

我ながら中々の出来に満足していると、さらに欲が出てきた。

このパンフレット売りたい・・・

特に小金が欲しい訳ではないが一応作ったのでもったいないし、久しぶりにメラメラと営業欲が沸いてきた。

昼食後ネット屋でパンフをプリントアウトし、その足でハッピーツアーへいざセールス。
アンちゃんを捕まえてまずは世間話、おススメのツアーや日本人客の様子、日本語教室など1時間くらい談笑する。話の内容から察すると、どうやらちゃんとした日本語版パンフレットが欲しいようだ。
和んだところで早速セールス開始。

「日本語パンフやるからハノイまでのバスチケットタダでくれ。」

突然の出来事にアンちゃんも苦笑いで「冗談でしょ?ダメダメ!」と答えるが、まだ若い彼女は金儲けの話が分かるとも思えない。彼女には残念ながら決定権が無いので取り合えずマネージャーを呼んでもらう。申し訳ないが今回アンちゃんにはセールス手段としての顔つなぎをしてもらった。

奥からマネジャーが出てきて本格セールス開始。

ちょっと日本語が分かるアンちゃんを交えてまずはシンカフェのパンフと他社の怪しい日本語パンフを比べ、アンちゃんに違いを聞く。
勿論アンちゃんもマネージャーも日本語の微妙なニュアンスを分かるわけがないので、一つ一つ言葉の誤りを説明する。

「ベトナム人が訳した怪しい日本語パンフレットを作っても余計に日本人に怪しまれるだけだ。英語のパンフを敬遠してどれだけの日本人客を逃がしているか分かるか?幸い私は日本でもパンフレットを専門に作っているプロフィッショナルだ。今日私に会えたアナタはラッキー!」
などなど適当な英語で口説いた後、作ったパンフの1枚だけを見せる。

l「こんなん欲しくない?」

エクセルで作ったそのパンフは、3色刷りのシンカフェパンフを除けば恐らく1番見た目がいいだろう。多分。
さらに一言。

「見た目シンカフェには劣るけど、私のパンフにはプロならではの日本人を惹きつける言葉のマジックが入っているので負けていない!ここでバスチケットをたった1席くれればアナタは数百倍の利益を手にする!」
日本で言えば歯の浮くセリフだがここはベトナム、旅の恥は掻き捨て。

「お前はいつまでサイゴンに居るんだ?滞在中に出来るのか?全ての現物を見てから決める。」

何とか説得の結果マネージャーも乗る気になり、矢継ぎ早に質問が来た。

なかなかいい感じだ。

「もうあるよ。」

1枚目を見て反応が悪かった場合は全部を見せて「ダメだったらこれを持って他の旅行会社に持っていくよ〜!」と言った。不利になったときに形勢逆転を狙う為1枚目しか見せなかったのだが、反応がいいのでそのまま見せる事にした。

「明日出発したいから今決めてね。」

こういうセールスは即決が基本である。本当はもう2・3日ゆっくりしてもいいのだがまぁいいや。

「う〜ん、OK!」

かくして約2時間の商談を経てハノイまでのオープンチケットをGET!
チケット代は$16なの時給$1だが、まぁベトナムだしほとんど趣味だからいっか。

チケットをタダでGETした事よりもセールスが上手くいったことに大満足の1日であった。腹痛も治って夕飯のビールが旨い!

  
  作成したパンフレットのトップページとアンちゃん(手前)

 
2005年4月7日