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  in  中国(雲南省)
     
         爽快!虎跳峡トレッキング    
          
 
 
 
 
中国雲南省の麗江(リージャン)から北へ80km程クネクネ道を進むと世界でも屈指の高低差を持つ渓谷があり、そこには全長約40km程のトレッキングルートがある。

渓谷の下には有名な長江の源流が流れ、川幅の狭いところは約30mになる。昔々その渓谷を虎が飛び越えたという人民伝説から『虎跳峡』という名前が付いたらしい。
南に『玉龍雪山5,596m』北に『哈巴雪山5,396m』と、5,000m以上の山々で囲まれ、その山頂に万年雪が残るトレッキングルートは歩くほどに少しずつ景観を変え常に飽きない絶景を楽しませてくれる。

谷底には景観スポットである虎跳石(上・中・下)が3箇所あり通常の麗江観光者はそこをちょっと見て終わるのだが、時間に余裕がある(暇な)優良バックパッカーのほとんどは谷底(標高1650m)から標高2580m地点までを上下しながらと数日掛けてトレッキングする。


ある日、麗江の有名宿『古城香格韵客桟』にたまたま集まった5人の日本人パッカーがチームを組み、1泊2日のトレッキングに挑む事になった。本当は各国のパッカー同士でチーム編成できればいいのだがたまたまこの日に行く面子が日本人しかいなかった、というか中国には白人パッカー少なすぎ!いうことで純和風トレッカー「チーム侍」を編成。
何はともあれ5人の侍は男集団でむさ苦しい事この上ない状況を乗り越えて、虎跳び(トラトビ)を目指しトレッキングに出発した。
宿の前にて

麗江からトラトビ最寄の町、橋頭(チャオトウ)まではバスで13〜15元(2時間半)だがあまりいい時間のバスがなかったので宿のママに頼んで車をチャーターした。一人20元だが時間の無駄を考えるとこっちの方が便利だという判断をした。

朝7:00に宿を出発し、9:15に橋頭到着。登山道入り口で入場チケットを買う。大人は30元だが私は何故か国際学生証(メードインカオサン)を持っているため15元で済んだ。9:30トレッキング開始っ!(1,700m地点)

馬に荷物を持たせてガイドするおっさん連中の誘いを無視しながら5分くらい歩くと立派な学校の門が見えてくる。門の上には『香格里拉(シャングリラ)三中』と書いてある。「シ・シャングリラ・・・」超カッコイイ名前だな〜と思いながらそのまま中学校内へ潜入する。この道が一番分かりやすい山道への近道らしい。
授業中の教室を横目にグラウンドとバスケットコートを突っ切ると、かすかに道が見えてきた。
立派な校門。      教室は授業中。

ちょっと心配しながら道を上がると行く手には数頭の馬と無数の馬糞が道を塞いでいた。「馬が居るという事はこの道に違いない!」そう確信した我々は散乱する爆弾を避けるようにおぼつかない足取りで先に進んだ。地雷を踏んだでしまったらこの2日間馬糞臭いままトレッキングをすることになってしまう・・・
しかし意外にもその後馬糞は役に立つことになる。道に迷った時は「馬糞があれば正しい道」という理論でスムーズにトレッキングができることとなったからだ。

初日の午前中はまさに馬糞との戦いであった。
恐らく馬たちも出発し軽く運動をした後で丁度よいトイレタイムなのであろう。15分くらい進むと道を完全に塞ぐありえない馬糞の山がそびえていたが侍集団は難なく突破、即席チームにしてはなかなかのチームワークだ。
なぜこんなところに馬糞が!?

1時間ほど歩くと標高も2000m近くになり渓谷から随分登ったなぁと感じられるようになった。
天気も良くトレッキング感覚を満喫する5人組。


11:00過ぎには昼食箇所に予定していた現地民族「ナシ族」の人達が経営するゲストハウスに到着。笑顔で温かく迎えてもらう。
名物のポテト?を食べ、食後に何故か宿に置いてあったバトミントンでちょっと運動。

12;00トレッキング再開。ここから約1時間が一番辛い区間となった。
このルートで一番高い地点を目指し、標高差約400mをかなりの傾斜で登っていく「28のうねり」というポイントなのだが、ただでさえキツイ区間にプラスして「男集団ならではの致命的要因」が加わってしまったため事態はマズイ方向へ進んでいく。

いわゆる男同士に存在する「なぜか人より早く登りたい心理」が作動してしまったのである。
別に争っているわけではないが、周りの景色を見ながらゆっくり登ればいいのに「各自マイペースで行こう」といいながら5分くらいすると全員が周りの素晴らしい景色も上の空で黙々とただひたすら上へ上へ本能によって登り始めてしまったのだ。

ヒーヒー言いながら「心が折れる!」を合言葉に登る者、一定のペースだが足元のみを見て集中する者など様々だが、お陰で通常2時間掛けてゆっくり登る坂道を40分足らずで終えてしまい先頭の2人は「頂上で集合しよう」という約束も忘れて1kmほど下ってしまう始末。
結局全員最高地点で休憩することは無かった・・・山頂付近2,580m。(止まってないので多分それ位)

男の本能発動でチームワークが乱れてきたその時、休憩を促すかのように小雨が振ってきた。
雨は次第に強くなってきたので1時間ほど下った「TEAゲストハウス」で休憩する。
結局1時間半降り続き、それまでハイペースで作った貯金を全て使ってしまった。お陰でメンバー内にも「まぁ、ゆっくり行こうや」という意思が伝わり、そこからは途中で休憩しながらのんびり進むことになる。

このゲストハウスでは残飯をアサる為に体を限界まで伸ばし食事をする犬を発見!こいつはガッツがあり、チャーハンで残った唐辛子まで食べていた。恐るべし人民犬・・・
前足で体を固定し器用に残飯を漁る。

15:20、小雨になったのでトレッキング開始。1時間ほど歩き予定通り宿泊施設の「HALFWAYゲストハウス」へ到着。2,345m地点。
ここからの眺めは絶景で新築したドミトリーの前に談話スペースがあり、そこから山々と渓谷が一望できる。
トイレからの景色も素晴らしく、ニーハオトイレ+囲いが1mほどしかないので絶景を見ながら用を足すことができる。ただ立ち上がった時は外の通路からも上半身は丸見えなので注意が必要。
この宿舎は大流行で、恐らく50人近くは止まっていただろうか。夕食は部屋の外にある机で食べるのだが、オーダーしてから80分待たされる。厨房は戦場で「メシまだ?」なんて言おうものなら怒鳴られそうな勢いだ。寒い中を渋々震えながら待った末に食べたチャーハンの温かさは一生忘れないだろう(美味しさでは無く単に温かさ)。
メシはイマイチだがドミトリー1泊10元(130円)だし、眺めも星も綺麗なのでおススメです。


翌日6:45、雨も上がり元気にトレッキング開始!
ココからしばらくは下り坂なので快調に進む。途中滝の中を進んだり、野生のヤギ軍団に遭遇する。クネクネと目まぐるしく情景が変わり、歩いているだけで楽しい区間だ。
         
1時間ほど下ると、渓谷付近の車道にぶつかった。近くにある「TINAゲストハウス」を通る。2020m地点。

ココから下は激流によって削られた渓谷を下り、見所である『中虎跳峡』を目指す。落差は400mで上から見るとほとんど崖である。
途中、「ココから先は管理費が別に掛かるから10元よこせ」というねーちゃんに出会うが無視して突破。特に強制ではないらしく、チケットをくれるわけでも無かったので「ちゃんと管理されていたら後で払おう」と思ったが、結局管理費が使用されていたと思われるものはゴミ箱くらいであとは他の場所と何ら変わらない道だった。難解な中国式ルールだ。

40分ほどで川辺に到着、ゴォォォ〜っと音を立てながら激流が流れている。下から見た山々も素晴らしく、見上げると「虎は飛べね〜だろ!」というお約束のスポットも綺麗に見えた。
いや〜、飛べないよね〜。

谷底からはこの行程最後のミッションで1時間ほど掛けて急な崖を登っていく。茶店のおばちゃんに聞くと登り道は何本もあるらしく、一番近い道は2本のハシゴ(25mと5m)を登るコースで、そこを登るなら10元よこせと言われる。どうやら上にあるゲストハウスのオーナーが個人的に作ったハシゴらしい。たかがハシゴに10元は高いと渋っていると6元にまけてくれた。団体料金だろうか?

実際にハシゴはスリリングでおもしろく谷底から200m位のところにあるのでスリル満点。6元の価値はあった。満足満足。
ただ安全性にちょっと問題があり、途中は岩に木が刺さってるだけで固定してあったので微妙といえば微妙だ。

11:00TINAゲストハウスに戻り無事トレッキング終了。
ローカルバスが通る橋頭まで25kmあるがバスはもう無いのでそん辺にいた暇そうな車に交渉して一人10元で送ってもらう。

途中落石注意!の看板が多数あり、道路にも実際に落ちた石がゴロゴロ散乱している。「マジ落石怖いよね〜」と話しているとドライバーが急にブレーキを踏んだ。前を見ると直径10cm程の石が20個ほど上からコロコロと落ちてきた。 

落石だ!石はゴロゴロ転がり車の手前で何とか止まった・・・

道端にゴミ箱付ける前に落石何とかしろ!命に係わるじゃねーか!

と思いながら車は最徐行で落石ポイントを進む。良く見ると落石でガードレールが破壊された後が・・・
最後まで気が抜けない虎跳峡であった。
落石注意!

帰りは橋頭からバスを拾い夕方無事宿舎到着。

雄大な景色がとても素晴らしく、今度は一眼レフを買ってトライしたいトレッキングスポットであった。



 
2005年4月28日